Core開発ブログ

「やりっぱなしの研修から、やりきる研修へ」 - 能力開発型タレントマネジメントソリューション Core の開発ブログです

人事側面から考える研修のやりっぱなし課題とは

株式会社ウーシアでCMOを務める杉村です。 研修のやりっぱなし課題について「受講者」「上司」「人事」の3つの側面のうち、今回は「人事担当者」の方々の側面からについて考えていきたいと思います。

なぜ受講者や上司の方々がやりっぱなしとなってしまうのと同様に、人事部門の方々において研修のやりっぱなし課題が起きてしまうのでしょうか。

研修転移の難しさとは

そもそも研修で求められることは学んだ内容の実践と成果へと繋げていくことでありますが、それは研修を行ったことだけで実現するものでないことは明白です。

カークパトリックの4段階評価法にあるように研修終了後の評価として、受講者が現場に戻り学んだことをどのように活かしているか、学びの内容は現場での実践に即したものになっているかを確認することには人力だけでは難しいと思われます。

また『人材開発研究大全』(中原淳編:東京大学出版会)にて「研修直後には、受講者の47%が、研修で学んだ内容を職場で実践すると考えているが、その割合が半年後は12%、1年後は9%には減少していた」とデータにて表されている様に研修を行うだけでは成果へと繋げることが困難であると言えます。

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人事部門の課題とは

人事部門の方々においても、受講生や上司の方々と同様に多忙であるという理由があると言えます。実際多くの企業では、4月の新人研修に始まり、1年間の研修スケジュールが網の目のように張り巡らされており、それをしっかり回すだけで手いっぱいとなってしまっているのではないでしょうか。研修前の準備、研修最中だけでなく研修終了後もアンケートを回収し、一定の分析をしたうえでプログラムや講師へのフィードバックを行い、次年度はそれを反映して実施するというサイクルを回すというところに留まっているケースが多いように感じます。

もちろん熱意をもって、学びの定着を推進すべく事後課題を課したり、また一定期間後に再度受講者を招集して実践状況の確認をしたり、という活動を行っておられる人事の方もいらっしゃると思います。しかし企業規模が大きくなり、受講者の数が多ければ多いほど、そうした事後のフォローアップは手間や時間が相当にかかる活動となり、現実的には多忙であるがゆえに難しい、という声も多く聞かれます。

ここまで受講者上司、人事という3つの側面から研修がやりっぱなしになる要因を考えてきました。 研修を成果まで繋げていくことは、受講者、上司、人事担当のそれぞれ個人の努力のみでは難しいことがわかります。限られたリソースの中でどのようにフォローを行っていくかというテーマが検討されて初めて研修のやりっぱなしの状態に対する適切な打ち手が講じられ、それにより学びの定着や実践、その先にある研修の成果へと結びついていくのです。
しかしこれは言うは易し、実行していくにはさまざまなハードルをクリアしていく必要があることもまた難題として見えてくることになります。


次回のブログでは、限られたリソースで研修の効果を成果に繋げ効果を最大化させるためにITを活用する手法についてまとめていきたいと思います。



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まとめ

  • 研修の学びは実践されて初めて価値を生み出すが、そのためにはフォローが重要である。しかし人事担当の人力的な活動だけではすべての受講者のフォローを行うことは困難である。
  • 研修の成果最大化のためには、受講生だけでなく、人事、上司の三位一体で取り組む必要がある

上司側面から考える研修のやりっぱなし課題とは?

株式会社ウーシアでCMOを務める杉村です。

研修のやりっぱなし課題について「受講者」「上司」「人事」の3つの側面のうち、前回の「受講者側面でのやりっぱなし」に続き今回は「上司」の側面からについて考えていきたいと思います。

おそらく多くの上司の方は、部下の方に成長してほしいという想いや姿勢で部下に接していることと思われます。 しかし、「学んだことを現場で活用し、フォローすることで成長を促すことができてますか?」と改めて問われると、自信をもってYesと言える上司の方は少ないではないでしょうか?

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そもそも研修による人財育成は、企業の成長にとって不可避ではありますが、研修はそのきっかけにすぎず必要なのは学んだ後の経験で成長することと言えます。 部下の方々が研修で学んだことを現場での仕事の文脈に当てはめ、実際に活用するという一連の取り組みには、研修に即した上司のフォローが重要な役割ではありますが、日々多忙な実務の中ですべての対応されることは難しいのではないでしょうか。

なぜ難しいのか?

部下が研修で学んだことを把握することが難しい

多くのケースにおいてはそもそも部下の方々がどのような研修を受けてきたかを適切に把握できていないことが多いのではないでしょうか。研修タイトルだけでは内容まで理解することは困難ですし、受講者からしっかりとした研修受講報告を受けたとしても、改めて「上司として学んだことをどう生かすつもりか?」と問われると答えるのはかなり難しいと思われます。 まずは「部下の方々が学んだことを理解する」ことが、スタートとなるのではないでしょうか。

研修の学びを継続フォローすることが難しい

研修で学んだことを活用して一定期間一貫性を持った指導を行い、適切なタイミングで応用を促したりフォローすることは理想ですが、部下も複数名いる中で自分の仕事も抱え、限られた細切れの時間の中で育成指導していく状況が一般的だと思われます。 そのため記憶に頼った指導では、勘違いや齟齬が生まれたりするのは仕方がないことと思われます。  まずは「記憶から記録に基づいた指導に転換する」ことが重要ではないでしょうか。

研修⇒成果までの距離がある

 研修で学んだことが成果に直結するケースは稀で、一般的には「頭でわかる⇒行動できる⇒成果が出せる」という段階でとらえる必要があります。

 つまり、「研修で頭でわかりOJTを通して良い行動を繰り返し行うこと」が重要で、それが結果につながるというのが成功体験となり人を育てることになります。  上司は「すぐに結果にフォーカスするのではなく、行動にフォーカスし、結果がでるまで伴走する」ことが重要となります。

研修内容の定着における、上司に求められる役割とは?

米国リーダシップ研修の調査機関であるロミンガー社による調査では、リーダシップをうまく発揮できる様になった人たちにおいて「70%が経験、20%が周囲の人からの影響やアドバイス、10%が研修」という結果があります。 この結果から、
 ①成長には、経験だけではなく上記3つの要素が必要
 ②研修はきっかけにすぎず、重要なのは学んだ後である
 ③人材育成には研修・経験・薫陶の要素をセットとして関連付けて考える必要がある
ということが言えます。

上司に求められる役割は上記③にあたる部分の、 「研修で学んだことを現場で活用し、フォローすることで成長を促すこと」が重要となるかと思われます。



次回は、人事側面から考えた「研修のやりっぱなし課題」について考えていきたいと思います。

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まとめ

  • 上司の役割として求められることとして「部下が研修で学んだことを現場での仕事で実際に活用しフォローするという一連の流れ」を実現すること。
  • 上司を行うポイントは、3つ
    ・「部下が学んだことをどのように活かすか」を具体化すること
    ・部下の結果ではなく行動にフォーカスして指導する
    ・記録に基づく指導を行うこと

受講者側面から考える研修のやりっぱなし問題とは

株式会社ウーシアでCMOを務める杉村です。先日第一弾のブログに続き、今回は「受講者」「上司」「人事」の3つの側面のうち「受講者」の側面から考える研修のやりっぱなしについて考えていきたいと思います。

忙しい(から忘れる)

研修受講者に「なぜ実践しないのか」と聞いて出てくる言葉が、これではないでしょうか?研修アンケートなどでも実際に多く聞かれます。 忙しいから学んだことを振り返えらずに、一定の時が経つと何を学んだのかの詳細を忘れてしまい、現場で活用しようにも実行できない、というのが多くの方にとっての現実ではないでしょうか?

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エビングハウス忘却曲線から見ても、1週間も経つと、学んだことを思い出し実践することは困難であると容易に想像できます。 ということは、学んだことを忘却する前に、自分の仕事の文脈に落とし込んで「実践すること、すべきこと」をクリアにしながら進めて行くという道筋を設ける必要があるということになるでしょう。

ところが、「学んだことを活かさないのはなぜ?」と聞くと「できるならやってますよ」という答えが多く帰ってきます。

「なんでやらないの?というのはそんな簡単な話じゃないのだよ」ということだと思います。 「分かると、できるは異なる」とよく言いますが、研修で習うだけでは十分な理解に至るのは容易ではない、ということを改めて考えておく必要があると言えます。

つまり、実践が難しいという問題は「研修受講」だけでは解消できない構造的な問題と認識しておくべきです。

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従来に戻ってしまう

仕事はどのようなやり方で取り組んでも全くできない、とはならないものです。自分なりのやり方でもそれなりの結果にはなるということであり、ゆえに馴染みのない新しいやり方を採用する方が短期的には負担が大きくなったりするものです。 例えば、ロジカルシンキングを一度体得した人は、それなしで仕事をするのは難しいと感じるでしょう。ただし、最初は実践しようとすることで却って時間がかかったというのが一般的だと思います。

経路依存という考え方がありますが、人間は基本新しいことを取り入れるよりも、それまでやってきたことや、やり方を続ける方を選ぶ傾向にあります。短期的にはその方が合理的な選択とも言えます。やりっぱなし問題を考える上で、こうしたことも前提として組み入れておくことは非常に重要です。

次回以降は、上司側面、人事側面から考えた「研修のやりっぱなし課題」についても考えていきたいと思います。

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まとめ

  • 受講者側面でのやりっぱなし課題の要因としては、学んだことを忘却する前に実践し習慣化できない
  • 実践が難しいというところが「研修」だけでは乗り越えられない。
  • 学んだことが定着する前に従来のやり方に戻ってしまう(経路依存)

なぜ研修はやりっぱなしになるのか?

はじめまして。株式会社ウーシアでCMO(Chief Marketing Officer)を務めている、杉村です。私たちは、企業研修の課題解決をすべく2017年より活動を開始したスタートアップ企業です。現在は「能力開発型タレントマネジメントソリューションCore」というSaaSをベータバージョンにて開発・運用しています。

これから私たちの活動状況をブログにて発信していきます。主に、企業における人財育成や能力開発に関わる方々、あるいは、そうした領域に関心をお持ちの方々に向けた内容となっておりますが、応援よろしくお願いいたします。

さて、初回となる今回は、私たちがソリューション提供を行う上で対象となる「研修のやりっぱなし」問題について考えてみたいと思います。

企業における、研修のよくある光景とは?

研修がやりっぱなしになってしまう傾向にある企業の光景を、受講者の視点で思い浮かべてみましょう。

研修に参加し、その会場にやってくるまでは仕事のことも気になり、『なんでこの忙しい時に・・・』など十分に前向きになれない中、プログラムがスタートしていく。

受講中は勉強にもなるし、それなりに使えそうとも思い、ちょっと職場を離れた場で同じような立場の人たちと話をする中で、普段以上に目線が上がったり、少し先のことを考えたりしながら前向きな気持ちになる。

『よし、今回学んだことを実践してみよう!』という状態で帰路へと向かう。

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しかし、日常業務に戻るとやはりいつも通り、もしくは開けていた期間の分だけ大変だ!
わかりやすく仕事が山積みとなり、依頼しておいた仕事も思うように進んでいないなどなど...
さらに、そんなときに限って急用が重なったりと、結局あっという間に時間が過ぎていく。あぁ、毎日忙しかった。仕事を回すのに精いっぱいでへとへとだ。

そういえば一週間前は研修を受けてたんだったな...
職場に戻ったらいろいろやってみようと思ってたのに何もできずに過ぎてしまった...
あれ、そもそも何を学んだんだっけ...?

  このようなことを体験したことがある方も多くいるのではないでしょうか。

「3つの側面」での課題とは?

研修はそこで提供された学びが受講者の知恵として定着し、そして実践されて初めてその価値が実態化します。一方研修の『やりっぱなし問題』は長年にわたり議論されており、昨今論じられるケースが増えてきています。

やりっぱなしになっているのであれば、そうならないような対策を打てばよい、と慌てて動く前に、そもそもどうしてそうなるのかをしっかり紐解いておくことが大切です。上記のように受講者側の事情の部分に着目されがちですが、受講者にのみその要因を求めていても本質的な解決策にはたどり着けません。その他上司側の事情、そして人事側の事情と、大きく分けて3つに区分し、精査することが必要です。またこれら3つはエコシステムとして密接に連動しているととらえるべきだとも考えています。

  • 受講者側面から考える研修のやりっぱなし課題
  • 上司の側面から考える研修のやりっぱなし課題
  • 人事の側面から考える研修のやりっぱなし課題

この3つの側面での課題、その関係性について、次回以降詳細にお伝えしていきたいと思います。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。私たちの発信する話題にご関心の方は、こちらのブログを購読いただくか、 Twitterアカウントのフォロー もしくは、 Facebookページへの「いいね!」 へのをお願いいたします。多くの方からの関心と意見がネット上でも交わされることで、私たちも、よりお役に立てる発信とサービス開発ができることと思います。

まとめ

  • 研修での学びは実践されて初めて価値を生み出すが、受講者は現場に戻るとなかなかそうできないケースが多い。
  • その要因を探究していくためには「受講者」「上司」「人事」が織りなす関係性をエコシステムとして分析し、対策を講じていく必要がある。